医師の中にも、SNSをうまく運用して仕事に繋げたり、ネットワークを広げたいと思っている先生は多いのではないでしょうか。
しかし、医師が実名で医療情報を発信するのにはリスクもあり、どのように運用すればいいのか悩んでいる先生も多いでしょう。
そこで今回、Xフォロワー数約5万人を誇るインフルエンサー医師のドクターK先生に、医師が匿名でもできるSNS活用術について教えていただきました。シリーズ全3回で第1回は『SNSを始めたきっかけと立ち上げるポイント』について教えていただきました。
眼科専門医兼医療ライター。眼科情報サイト『オンライン眼科』の記事執筆、運営。現在、m3や日経メディカルなど各種メディアで啓発活動のための記事作成、講演会などを行っている。
はじめに:SNS運用を始めたきっかけ
SNS運用を始めたきっかけは、2019年に「フォロワー1000名を超えるような、インフルエンサーになれるか勝負しよう」と高校時代の親友と話したのがきっかけでした。
しかし、特にノウハウもなく、研修医の頃だったので知識もないため、半分本気半分冗談の気持ちでアカウントを開設しました。
予想通り、最初はポストする内容もなく、とりあえず日常起きていた出来事をポストしていました。
転機が訪れた時期は、研修医が終わり、眼科専攻医1年目です。研修医の時、勉強した内容はEvernoteというサービスを使ってまとめていたのですが、「眼科の情報は調べても出てこないものが多いから、自分でサイトを作ってしまおう」と思い立ちました。
大学生の頃からブログの作り方を勉強しており、記事も数百記事書いていたので、ブログ作成に抵抗はありませんでした。
そして、1日1記事を目標に、眼科の医療情報発信を始めました。それが「オンライン眼科」というブログサイトです。
しかし、記事をUPしていただけではその記事が読まれることはほとんどないため、サイト流入のため始めたのがXでのSNS運用です。
初期の期待と不安
最初にSNSを始めたとき、正直なところ期待と不安が入り混じっていました。
インターネット上にはあまり落ちていない情報なので、僕のブログを広く見てもらうことができるだろう」という期待がありました。
一方で、匿名のアカウントであったため、「情報が信頼してもらえないのではないか、誰にも読まれないのではないか」という不安もありました。
しかし、いずれも根拠の薄い期待と不安であったため、どうすればブログを見てもらえるか、どう運用すればXを見てもらえるかリサーチを始めました。
ブログに関しては、ブログで収益を得ているブログ、閲覧数が多い(検索で上位に表示されるブログ)ブログを徹底的に分析し、自分に取り入れられるものは全て取り入れたつもりです。
また、SNS運用に関しては、SNS運用のサロンに入ったり、いわゆる情報商材を買い漁りました。そして、この情報に関しても、自分ができることを試しました。
その結果、ブログの閲覧者は増え、フォロワーも少しずつ増えました。僕の初速は早くなく、フォロワー1000名を超えるまでに5ヶ月ほどかかっています。
現在の感情と運用の変化
SNSを始めてから時間が経つにつれ、私の運用方針や感情にも変化が生じました。最初はフォロワー数が少なかったため、誰に向けて発信するかを意識することが重要だと考え、眼科関係者に対する発信のみをしていました。
しかし、フォロワーが増えるにつれて、一般の方からの質問やコメントが増えたこともあり、一般向けの記事作成やポストを投稿し始めました。
記憶は曖昧ですが、フォロワー3000名を超える手前で、フォロワーが伸び悩んだことを契機に、一般向けの発信に力を入れるようになったと記憶しています。
そして、一般向けの方向けの発信をすると、記事が爆発的に伸びたり、ポストがバズることも増えました。しかし、これは最初から一般向けの発信をしていたのではなく、眼科関係者との関係性があったからこそと考えています。
そして、現在では、SNSは私にとって医師としての影響力を広げるための重要なツールとなっています。フォロワーからのフィードバックや反応を通じて、医療情報の啓発活動がどれだけ社会に貢献しているかを実感する機会も増えました。また、SNSを通じて出会った他の医療従事者や企業とのコラボレーションも増え、医療に関する新しい視点や知識を得る機会が多くなりました。
SNS運用の初期における工夫
先ほども少し触れましたが、SNS運用の初期は、どのようにして自分の発信内容を広めるかを考える必要があります。
僕はまず医師としての信頼性を大切にしながら、情報の正確さに重点を置くことにしました。
そのためには、同じ医療従事者にコメントをいただく必要があります。そのため、コメントでのやり取りはもちろん、コミュニティなどでも積極的に話しかけに行きました。
そうしていると、逆にコメントをいただけることもあり、時には訂正や補足などもしてくれる様になりました。その結果、ポストはより正確なものになり、ポストがより表示されるようになるという好循環に繋がりました。
また、一般向けに専門的な医療情報を発信する際には、難しい専門用語をなるべく避け、一般の人々にも理解できる言葉で説明するよう心がけました。親しみやすさも重要と考え、硬い内容だけではなく、Xでバズった大喜利などにも挑戦しました。
これにより、単に情報を提供するだけでなく、フォロワーとのコミュニケーションが生まれました。これらが少しずつ影響して、今のフォロワー数に到達したと考えています。
実名での発信によるリスク管理
「Xを始めるにあたり、実名か匿名かどちらが良いか」について聞かれることがあります。結論を言えば僕はまず匿名での発信をオススメしています。
匿名は発信内容だけが評価されます。特に医療情報の啓発活動であれば、内容が良ければ伸びます。しかし、初速は遅いため、継続することが重要です。早く結果を出したい方には向いていませんが、ゆっくり長く続けたい方は間違いなく匿名が良いと思います。
一方で、肩書やある程度の地位がある人は、匿名よりも実名の方が投稿内容の信憑性の高さからすぐに伸びます。その場合に限り、僕は実名での投稿をオススメしています。
しかし、これには炎上などのリスクを伴うため、ポストの内容には十分な配慮が必要です。職場にクレームなどが入り、実生活に影響する恐れもあります。
さらに、現在のXはすぐに誰かの揚げ足を取る風潮が加速しています。これらを考慮すると、最初は実名よりも匿名で、炎上などの懸念がなくなれば実名に変更するのが良いと考えます。
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