独自のキャリアを突き進む医師にインタビューする企画『わたしのキャリア戦略』。第2回は、精神科・美容外科で活躍されている湯地義啓先生にお話を伺った後編です。後編では、自由診療の世界で生き残っていくために大切なことや、美容外科医のキャリアについてお話を伺いました。(前編はこちらから)
湯地義啓先生
精神科専門医。品川メンタルクリニック 院長補佐。某大手美容外科クリニック美容外科医
この記事でわかること
・今後自由診療業界で生き残るために大切なこと
・美容外科医のキャリアについて(研修、独立、開業)
——最近は美容外科に進む医師も多くレッドオーシャンと言われますが、実際のところはどうなのでしょうか。実はそんなにまだ飽和していないみたいな印象もあったりするんですか?
分野によると思います。美容外科、美容皮膚科の中でも何をやっていくのかによります。例えば、脂肪層より下の骨までちゃんとオペ出来るような技術を習得すれば、全然ずっと生き残っていける可能性はあると思います。一方でヒアルロン酸などのファスト美容の部分だけでってなると結構やっぱり、差別化できるものがないと難しいですよね。
——例えば、ヒアルロン酸注入とかで差別化するとなると、なかなか難しい気がするのですがどうですか?
センスっていう部分はあると思います。また、これからはSNSをうまく使いこなして「見せ方」がうまい人が残っていくのかなっていう感じはしますね。基本の手技ができるのは大前提として、自分のいわゆる「セルフブランディング」がうまくいった人が勝ち残っていく。セルフブランディングがしっかりできている人にとっては、ブルーオーシャンにしか見えないと思います(笑)。
——美容外科に行かれる先生は、どのようなキャリアを歩まれる方が多いのですか?
美容外科っていう部分でいうと、皆さんやっぱりまず大手を目指されると思います。やっぱりこう誰かに教えてもらわないといけないっていうものがかなりあるんですね。最近だと、湘南、品川、東京中央などに進む先生が多いですね。美容外科が後期研修の一つの進路としてしっかりと認められるよう研修医プログラムを作るクリニックが増えはじめていて、そのプログラムがだいたい後期研修医と同じような3年間のプログラムみたいな形になっているんです。それに乗っかって皆さんやっていきます。もちろん初めの頃は、センスみたいな部分で差がつくんですけど、研修を重ねていくとその差が結局どこかでプラトーに達して、手技的なレベルはみんな変わらなくなってきますね。
その後は、企業と組んだり、友達とかと組んだりして開業を目指し始めますね。
——開業するのがだいぶ早いんですね。
結局三年ぐらい美容外科をやっていると、やっぱりみんな頭が良いので悟り始めるんですね、「やっぱり雇われを卒業して自分のクリニックを持ちたい」と。他の診療科と比較すると、美容外科は時代のトレンドにのって育ってきたフレッシュな医師にとってかわられやすい。だったらある程度手技をみにつけて若いうちに自分は経営者側にまわる。そのために3年間位の間で習得できる手技の何かしらに特化して、セルフブランディングを行っていく。その上でクリニックの同期や後輩や大学時代の友人を引き連れて開業するというな流れが多いような感じがしますね
——開業するとなると、皆さんやっぱり東京でやられる方が多いですか?
差別化できるような何かしらのものがある先生は新宿や銀座で開業される先生が多いように思います。そうでなくても、やはり山手線周辺に開業される先生が圧倒的に多いように思えます。でも、収益の面だけで言うと、北陸、中部などの関東以外でも新幹線が止まるような交通の要所であれば、地の利だけで稼げたりもしますし、差別化できる技量をもった医師であっても関東以外でいったん開業して、ノウハウをしっかりと学び、東京進出という部分も今後は考えられるのかなって感じがします。今、かなり都内のテナントの賃貸料やらない総費用が高くなりすぎているので、かなり参入しづらいですし。
——先程開業する際は、企業と組んでやることがあると聞きましたが、どういったつながりなのでしょうか。
美容外科の人ってこれちょっと偏見もあるかもしれないですけど、夜の付き合いで飲みにいく人が多いんです。そうなってくると、多分そこら辺の人たちが、不動産屋さんであったり、向こうから結構声かけられることが多いみたいで。そういった繋がりの中で、利用されないように気をつけながら、一緒に組んでやったりすることもあるんですよね。
——そんな世界もあるんですね。もう一つお聞きしたいのが、形成外科出身の先生とそうでない先生では、やはり技量の違いはかなりあるのでしょうか。例えば、未経験から大手美容外科で三年とかある程度経験積んでも、やっぱり形成外科から来た先生には勝てないというか、そういった部分もあったりしますか?
それ、入る前に僕も思ってたんですよね。形成の先生すごいのかな?みたいな感じで。やはり形成の先生は、一つ一つの道具の使い方であったり、縫合の仕方が綺麗なんですね。こだわるというか、ものすごい。もうなんか繊細な形で。ただ、それが患者さんにとって満足かどうかっていう満足度の問題っていうのは、また別の問題になってくるんですよね。逆に、初めの頃は形成の先生でも、糸リフト一つとっても全然できなかったりするので、その辺りはどこからきてもある程度経験値を積むことでできるようになりますね。
——患者さんはこの先生は形成外科でやってきたから大丈夫だ、というふうに経歴はあまり見ないんですか?
多分ですけど、たくさんの施術を受けられている美容医療オタクの人は見てるんですね。ただ、大手の美容クリニックとかだと、やっぱりSNSの施術の画像。患者さんはほとんどあれしか見てないみたいなんです。正直あんまり研修医上がりも形成上がりも関係ないかなというところです。本当先ほどお話ししたようなSNSをいかにうまく見せるかだと思いますね。
——大変参考になりました。最後に今後の先生のキャリアの展望を教えてください。
僕の場合、精神科の頃摂食障害の患者さんを担当していたこともあり、体型や体重をコントロールしていく痩身治療に力を入れていきたいです。ですので、来年度は保険診療と美容外科を続けつつ、大学院に行くことも考えています。あと、ちょっと変わってるかもしれないですけど、調理専門学校にも通おうかなと思っててですね。
——調理専門学校ですか!?
摂食障害、肥満といった部分をメインにやっていきたいので、栄養学についても学びたいんです。開業するのもなしではないですが、儲けるというよりも長年かけて自分のやりたいことってなると、もっと勉強していきたいなと思っているんです。大学院に行きつつ、保険診療、美容外科、調理専門学校を両立する。私は一日に2回働けるというか、動けるとおもっています。なので、1週間は7回でなく14回のような感覚です。常に成長を意識しながら動きつつ、人生を楽しみたいと思っています。
美容医療の中にいなければわからない貴重なお話を伺うことができました。
ありがとうございました!