保険・自由診療で痩身診療に挑む:精神科・美容外科 湯地義啓先生(前編)


独自のキャリアを突き進む医師にインタビューする企画『わたしのキャリア戦略』。第2回は、精神科・美容外科で活躍されている湯地義啓先生にお話を伺いました。現在は痩身治療に力を入れておられるという湯地先生。精神科から美容外科に進んだのにはどのような経緯があったのでしょうか。自由診療の最前線で働く先生に、現在の美容外科業界の情勢と今後の展望について伺いました。

湯地義啓先生

精神科専門医。品川メンタルクリニック 院長補佐。某大手美容外科クリニック美容外科医


この記事でわかること

・現在の美容外科業界の最新事情
・なぜ美容外科になる医師が増えているのか、現場で働いているからこそわかること。

——先生は少し変わった経歴をされているとのことで、詳しく教えていただけますか?

そうですね。僕、一度他の大学の物理学科に行きまして。その際は最初パイロットになりたかったんですけれども、パイロットの試験に落ちてしまいまして。どうしようかなって考えた時に、一個下の弟がいるんですけれども、先に弟が医学部に入っていたので、それを見て自分も何か資格を持って仕事をしようかなと思ったのがきっかけです。あと御茶ノ水先生と同じように、僕も学生時代に学習塾の方を始めた経緯があって、生徒たちが、医学部に何人か入っていくような状況で、僕もやっぱり医学部に行こうかなみたいな形で受験を考え始めました。

——経営していた学習塾の生徒さんや弟さんがきっかけで医学部を目指し始めた部分があったのですね。

そうですね。それでもともと父の実家が宮崎なんですけれども、宮崎大学の医学部に行きました。卒業後は初期研修で関東の病院に行きました。元々は整形外科の方をやりたかったんですけど、右目が円錐角膜になってしまって(現在は治療済み)、それで一旦オペの道を諦めました。その後、診療科を考えた時に当時一番嫌いだった精神科が、やってみたら面白かったので、その道に進みました。

——精神科の次に自由診療に行かれたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

なぜ自由診療に行ったか、実は今も保険診療はしているんです。二足のわらじ的な形なんですけれども。両方をする中で私が注目しているのが、肥満治療なんですね。現在の肥満治療は、どうしてもお金儲けをしてやろうというような診療が流行っていて、いろんなやり方があると思うんですけど、精神科の頃から摂食障害の患者さんを多く見ていたので、僕は僕なりにこうした方がいいんじゃないかっていう、ビジョンがあってですね。その実現のために保険診療と自由診療の両方をやっています。

——–最近の痩身治療はどのような治療が流行っているんですか?

最近だと、GLP1製剤であったり、脂肪冷却や脂肪吸引、小顔という意味では糸リフトをやることも多いですね。オンライン診療の普及もあって、やっぱり需要は伸びています、最近ではGLP1製剤が不足しているのもニュースになりましたね。

——先生は大手美容外科でも勤務されているとお聞きしました。若い医師が気になるのが、最近美容へ進む医師が急増していると思うですが、やはり生き残るのは大変ですか?

初期研修終了後からすぐに大手美容外科に行く人数は、大手3つの美容外科を足して約200名くらいです。最近だと、200じゃ収まりきらないかもしれません。

——そんなにいるんですか!?

はい。その中でも、女性の比率が非常に高いなっていう印象です。僕の個人的な印象では、女性の先生は熱心な方も多く、休みの日も自己研鑽のためクリニックに行き自主勉強する先生は、女性医師の方が多いかなってイメージがありますね。

——なぜそんなに初期研修直後に美容に行く女性の先生が増えているんですか?

女性の先生が初期研修を終える時って、多分20代半ばになる事が多いと思うのですが、結婚や子育てを現実的に考え始める年齢になります。現在の大手美容外科のプログラムは、選考医プログラムの後期研修のような形で、3年ほど在籍すれば一通りの手技を身につけることができるんです。そこでしっかり働けば、スキルも身について、尚且つお金の面でもかなり良い。そして自分の時間も作れる。一方、専攻医の後期研修のプログラムは年々厳しくなってきており、結婚、出産、趣味など自分の時間にかける時間はかなり少なくなってしまう。若い方達の思考からすると、これは大きなデメリットとなるのではないかと考えます。

——これだけ美容に行く人が増えると、今後はどうなると思いますか?

医師に限らずですが、時代の流れとして、まずは自分の中で仕事と家庭を両立できるようにしていきたいという傾向はますます広がっていくと思いますよ。ですから、自由診療が今レッドオーシャンと言われてて、今らか行くのはどうなのっていう雰囲気がありますけれども、それでもまだ増えると思います。

——先生は、初期研修終了後すぐに美容に行くのは、正直どう思われますか?

年齢によると思うんですけど、例えば現役または一浪とかで、どうしてもめちゃくちゃ美容がやりたいっていう方だったら、もう全然美容に行くべきだと思うんですね。一方、自由診療か保険診療か本当に五分五分で迷っている。ずっと美容でやっていけるか不安。保健診療も自由診療もいいなみたいな形で本当に決めかねているのなら、僕はもう少し保険にいるべきだと思います。まず保険診療に行って、そこでダメだったらもう自由診療に行くっていう形でもいいと思います。別に保険が偉いとかそういうもので全くないんですけども、やっぱり保険診療を知っているのと知っていないとでは患者さんに対する対応力というか、深みが違うかなと思います。提供する医療の質であったり、教育制度的にも保険診療の方がまだ体系が確立されていますからね。

「保険診療が保険になる」とシャレで言ったりするんですけど、今後どうなるかわからない自由診療で例えば10年くらいやって飽きてしまったりした時に、いざ保険診療の分野に行こうと考えても、保健診療の経験がないと雇ってもらうのはかなり難しいかと思うんですよね。

——自分も自由診療の経験あってわかるのですが、やはり施術が単調で飽きてしまう部分はありますよね

結構みんなやっぱその壁ありますね。すごくわかります。自由診療の先生方はみんなそう言います。だから、難しい手技を求めたり、あるいは経営側に回るために開業するということになるんですかね。

美容外科に進む医師は特に女性医師で増えているというのは、初耳の話でした。
後半では、今後自由診療業界で生き残っていくための秘訣や、先生のキャリア戦略について伺いました。

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