多忙な外科医が切り開く多様なキャリアパス:H先生のストーリー

独自のキャリアを突き進む医師にインタビューする企画『わたしのキャリア戦略』。第1回は、外科医のH先生にお話を伺いました。
現在されている複業についてお話を伺うことができ、「医師がそこまでやるのか、行動力がすごいな」という印象を受けました。

 


H先生(本人確認済)

初期研修終了後、後期研修で都内市中病院の外科プログラムへ。専門医取得後、現在は大学院で疫学の研究に従事。週に一度訪問診療や、企業の医療コンサルなどの仕事もされている。


先生の現在の働き方について教えていただけますでしょうか。

現在、メインは大学院生で疫学の研究をしています。もともと市中病院のプログラムで外科医として乳癌や大腸癌の執刀をしていました。現在研究しているのはがんです。研究機関からの報酬は手取りで20万円くらいです。都内在住だとそれだけでは生活できない部分があるので、週に一度、地方で訪問診療をしています。それと、大学院に入学するタイミングでその他の副業も始めました。

市中病院で外科プログラムをされていたとのことですが、大学のプログラムではなく市中のプログラムを選んだのには理由があるのでしょうか。

私はもともと初期研修から、その後の外科専攻医でもずっと市中病院にいて。初期研修医の頃から、外科の専攻医が終わったタイミングでどうしようかなと考えていたんですね。医局に入って外科医として臨床を続けるか、他の道を模索するのか。医局に入ったらある程度未来っていうのが決まってくると思うんですね。そこで自分としてはずっと外科を続けるかっていうのは、その時点では疑問に思ってた部分があったので、ま、それよりかは自分でそのまま医局に属さず大学院に行って学位を取得するっていうのは、今後のキャリアにおいて損はないと考え大学院に進学しました。

医局に入らなかった理由は他にもあるのでしょうか。

医局だといろいろ制限があるからっていうところは大きかったです。例えば、将来的なことを考えると、退局するときに教授と交渉する必要があったり。臨床だけをずっと続けるイメージはなかったので、三年間やれば後腐れなく止めることができるというのもありましたね。

ちなみにH先生はなぜ外科専攻医を選ばれたのでしょうか。

私の家庭事情的にサラリーマン家系で医者自体が私しかいなかったので、医者っていうキャリアについてあんまり参考にできる人が身近にいなかったんですね。やっぱりそのドラマとかでは、取り上げられる話が外科の方がメインじゃないですか。なので、医者のイメージが外科だったんですね。それと、手術をして実際に自分の手で治療できて、患者さんがよくなっているのが目に見えてわかるというのも理由にありますね。専攻医が終わった後のキャリアがものすごく良くイメージできてたかといえばそうではなかったです。色々やりながら考えていましたね。やっぱり、外科医を60歳まで続けられる花道かって考えた時にまあ現実的ではないかなと私は思ってしまった部分があって。それに、自分の人生も一度きりしかないので、他の時間をもっと充実させたいなというのもありましたね。

一般的な外科の先生だとどういったキャリアを歩む方が多いのでしょうか。

一般的には、外科専攻医プログラムの後に結果的には医局に属していろんな病院に行くっていうのが多分王道的なキャリアとしてあるかなと思います。医局に入るメリットとしては、入ってしまえばある程度決まったレールの中でキャリアを構築できるというところがあると思います。デメリットとしてはどうしても大学病院だけにいると希少疾患や難しい症例が多いので、一般的な疾患の経験が乏しくなってしまうっていうのは一般的に言われていることであると思います。大学病院と比較すると、市中病院ではある程度ジェネラルな症例を積むことができる点はメリットですね。ただ、専攻医が終わった後に新しい就職先を探さなければならないというところはありますね。

大変忙しいという印象の外科医ですが、待遇の方はどうでしたか?

これに関しては派遣される病院によってすごく差があるっていうのがやっぱり実情ですね。機関病院で働いてる時はどうしても満足のいく額ではないというのがありました。労働時間的にもやっぱりもうちょっともらってもいいんじゃないかなっていう。外科だと残業に換算できない時間っていうのは必ず生じてしまいます。ただ、地方とかだと給料的な面では満足いく額はもらえるんじゃないかなと思います。

研修医や医学生で、もしこれから外科のプログラムを考えていらっしゃる方にアドバイスするとしたら、どんなアドバイスをしますか。

どうしてもそのやりがいっていうのも大事かなとは思うんですけど、やっぱり専攻医に上がってくる時期って年齢的にも結婚とか出産とか、自分だけの人生じゃなくて、パートナーができたりとか、もうちょっと他の人の人生にも責任を持って決めなきゃいけない時期だと思うんです。金銭面的なところも考えて就職先を決めた方がいいんじゃないかなっていうのはありますね。細かい部分で言うと、就職先の病院が主治医制を取ってるのか、それともチーム制を取ってるのかっていうのも、一つの判断基準ではあるかなと思います。主治医制だと、自分が執刀した患者は基本的に全て自分の責任になるので、土日も病院に行ったりと大変な部分があるのですが、チーム制だとある程度やっぱりカバーしてくれる文化があったりするので、自分にかかる負担はチームの先生みんなで負担する分少ないかなというところですね。

現在は大学院に通いながら訪問診療を行っているとお聞きしました。普段の生活について詳しく教えていただけますか。

訪問診療の方は週に一回行っています。平日に1日枠をもらってやっています。研究は平日週に4回です。副業としては、治療アプリの開発に関わったり、企業の医療相談に携わったりしています。その他には医療記事の監修などメディアの運営にも携わっています。

かなり色々やられてますね。どのような経路でお仕事を見つけてきてるんですか?

私の場合はひたすらGoogle検索ですね。場合によってはXとかで情報収集したりもしています。自分でいろいろなサイトに登録したりもしています。あとは、ヘルスケアをメインでしている企業の採用ページに行って、そこで募集のページがあったらとりあえず応募してみるっていうような形ですね。もちろん不採用っていうことも多々あるんですけど、まあそれはそれとして、まあ、とりあえずそういった枠があればとりあえずチャレンジしてみるっていうのが基本的なスタンスですね。Googleだと「ヘルスケア 医師募集」などで検索すると出てきます。そこで出てきたものに片っ端から応募していく形です。あとはIndeedとかでも企業が医師を探している時があるので、そういったものもこまめにチェックしたりしています。あとやっぱりある程度そのキャリアを積んでる先生であれば、LinkedInに自分の経歴を登録してヘッドハンティングみたいな形で仕事をもらうっていうのも聞いたことはあります。

これから副業を始めようとしている先生方に、かなり参考になりそうなお話でした。最後に、今後の先生のキャリアの展望について教えてください。

最短で大学は三年で卒業できるので、まずは早く学位を取得できればいいなと思っています。

その後のキャリアとしては、正直今の段階では臨床に戻ることは考えてなくて、海外で働きたいっていうのがずっと目標としてあるので、例えば製薬企業に入ったり、ヘルスケア系のベンチャーに入ったり、最近だと国際機関にも、ちょっと興味があったりします。少しずつ情報収集していきたいと思います。

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